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  • 執筆者の写真村田りか

0歳から1歳の子どものこころーその1

更新日:2023年9月14日

0歳編



妊娠時や出産時、その後の子育て時も、私たちは肯定的な感情や否定的な感情、喜びや苦痛、幸せや混乱と不安といった色んな気持ちを経験するものです。赤ちゃんもまた同じのようです。胎児の時も、聞き慣れた音を聞いてゆったりしていそうな時も、突然の物音にびっくりしたような時もあるようです。妊娠後期には、窮屈で不快に思っているかもしれません。出産時には赤ちゃんもお母さんも大変な恐怖と不安と痛みを経験していることでしょう。環境の激変に圧倒された赤ちゃんは、産声をあげて動揺する気持ちを伝えてきます。生後数ヶ月は、赤ちゃんが胎児だった頃と同じような動きをすることも報告されています。胎児から赤ちゃんへと呼び名は変わりますが、同じ一人の子どもなのです。

 赤ちゃんが誕生すると、赤ちゃんだけでなくお母さんも、お父さんをはじめとする家族も環境と生活が激変します。赤ちゃんは泣いて、例えばお腹が空いて飢餓による死ぬかもしれないという根源的な恐怖を伝えてきます。そのため赤ちゃんを世話をする私たち親も大いに感情を揺すぶられます。親になったことで、自分自身の親に対する強烈な感情が蘇ってくることもあります。このように赤ちゃんと親のお互いの感情がお互いに影響し合って、お互いを見つけていく道のりが続いていきます。私が観察していた生後間もなくの赤ちゃんも、聞き慣れた家族の声に耳を傾けていたり、お母さんが側を通るのを目で追ったりすることが観察されました。お顔を見せて声をかけたりと、一緒に時間を過ごすことがたいせつになります。それでもどうしようもなくなって、お互いにイライラしてしまうこともあるでしょう。産後すぐのお母さんは傷つきやすくなっているものですが、お母さんの気分が落ち込んだり赤ちゃんに否定的な気持ちをもつことがあるかもしれません。これは驚くべきことではないことを忘れずにいることが大切です。このようにお互いに影響し合いながら、赤ちゃんは親にいろんなことを紹介してもらいます。今泣いている不快な気持ちは「お腹が空いた」なんだな、この不快な気持ちは「うんちが出て気持ちが悪い」なんだなとかです。時には「なんだか分からない不快」というのもあるでしょう。「ただ疲れているだけ」の時もあるでしょう。私たちにも赤ちゃんが泣いている気持ちが分からないのは不思議なことではありません。赤ちゃんは、何もかもが初めての世界で、自分がどこにいて誰なのかも分からず、動くこともままならず、言葉も分からない、ただ不安で恐ろしくて無力感でいっぱいかもしれません。その強烈な無力感に圧倒されて、お世話をする私たちもまた無力感を感じて耐えられない気持ちになりがちです。自分を責めてしまうことは、親にも赤ちゃんにも役に立ちません。自分に赤ちゃんへの愛情は変わりなくあることを忘れてはいけません。できれば誰かに話したり、必要な援助を得たりすことが大切です。そうすることで、赤ちゃんへの愛情を再発見しやすくなります。

 次第に赤ちゃんは成長して、首を回したり、寝返りをしたり、お座りもできるようになってきます。自分の手足も発見して、口に入れて調べることもし始めます。表情も発声も色々出てきます。おっぱいやミルクを飲むことで、自分やらお母さんやら区別がつかなかった赤ちゃんが授乳してくれる自分とは別の人がいることに気がついていきます。離乳食が始まると、赤ちゃんは新しいもの(離乳食)に出会い慣れていくことと、古いもの(おっぱいやミルク)からお別れしていくことを経験して、強い感情が掻き立てられます。親もまた然りです。この慣れ親しんだことからのお別れと新しい経験をして成長していく過程を時間をかけながら歩むうちに、赤ちゃんは自分の中にある感情や、これまで全世界だったお母さんが良いところも悪いところもある自分とは別の人であることに気がついていきます。また、他にも感情を持った別の家族がいることにも気がついていきます。他者に気がついていくことで、自分のことにも気がついていきます。一緒に遊んでもらって楽しんだり笑ったり、自分がしたことでお母さんや家族が楽しんたり笑ったりすることも経験していきます。一方で、手が届かなかったり、思うように動けなくて大泣きして、悔しさを伝えてくることもあります。赤ちゃんのこういったアップダウンの激しいい感情に細やかな関心を向け、注意深く扱うことが必要になります。私が観察した赤ちゃんも、抱っこをせがんで泣いてお母さんに抱っこしてもらった時には私にドヤ顔をして見せていたものです。赤ちゃんには、このように自分でコントロールできるという経験が必要です。これが内的な強さと自身の方がとなります。その一方で、「だめ」と言う限界設定も必要です。どんなに赤ちゃんが抵抗しても限界設定が保たれることで、赤ちゃんは安心すると言われています。赤ちゃんには自分の荒々しい感情や衝動を、度を超えないよう止めてくれる人がいると分かっていることはとても安心をもたらすのです。赤ちゃんが欲求不満に耐えたり、少しの苦痛には自分で対応できることを学んでいく援助も必要になってきます。私が観察していた赤ちゃんも、寝返りをして片方の腕が自分の体から抜けずに苦しそうで今にも泣き出しそうでした。それでも手足をバタバタさせているうちに腕が抜けて私に誇らしげな笑顔を向けました。匍匐前進の頃には、苦しそうに行きたい方向に進んでいましたが、力尽きた所で側にあったオモチャで遊び始めました。切り替えができた感動的な瞬間でした。このように赤ちゃんには力があることを信じて見守ることで、赤ちゃんが自分の力を知っていく手助けができるのです。

次はこの頃の困りごとについて考えてみましょう

1.おっぱいの困りごと

2.泣くことの意味

3.寝ることの困りごと

4.食べることの困りごと

 

 

 

 

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